ご挨拶
甚大な被害を残した未曾有の大災害。現状に向き合い過ごしてきた時間は胸懐計るに余りあり、これまでのライフスタイルや価値観、人間関係や生き方について振り返る契機となりました。復興が進む中、舞台芸術をこよなく愛す仲間たちが一人、二人と集いを増やし、悲しみや希望を語り合い、個々の想いを表現芸術という手法で一歩ずつ蘇り、輝きを希求し続けてきました。
「劇都仙台」を掲げるわが街仙台は、様々なスペシャリストが創りあげる総合芸術の振興・舞台芸術全体の向上をはかるべく様々な活動を行っています。しかし、バレエをはじめとする洋舞踊は教室の発表会やコンクールの開催が主たる活動となり、関東圏で開催されているバレエ団の定期公演はありません。将来の舞踊界を担う子供たちは、教室で真摯にレッスンに励むも、成果披露である発表会の出演やコンクールの出場に留まり、活動の枠を広げ、可能性を見出す場が僅少です。
舞台芸術はひと時の感動を与える表現活動ではありません。決して切り花にしてはいけないのです。地域に種を蒔き、蒔かれた種を大事に育てていくことで根が深く張りめぐらされ創造芸術のインフラが確立される。確立された地元・仙台の地で舞台を取り巻く様々なプロフェッショナルが誕生し、互いに切磋琢磨しながら活動し続けることこそが、総合舞台芸術の振興の本質と考えます。
2011年度に小学校でスタートした新学習指導要領では、知識技能の習得だけでなく、それらを「活用」した思考力や判断力、表現力の育成を重視した「21世紀型スキル」を伸ばす取り組みを始めています。文部科学省では、本物の舞台芸術体験事業が創設され、子どもたちが本物の舞台芸術や伝統文化に触れ、豊かな感性と創造性を育むことを目的とする活動が行われました。
舞台づくりは、ダンサー自身のテクニックの習得や向上はもちろん、自ら思考し、感じ、表現を繰り返しながら自ら構築し具現化するインストラクション的(テクニックの習得)な学びとコンストラクション的思考(舞台を創る)の融合が須要です。若者たちの柔軟な心と身体はたくさんの機会を与えることでインストラクションとコンストラクションが同時に鍛錬され、新しい価値を生み出す創造力、意思を形にする能動性が育まれます。
そして、舞台公演は、様々な職種・年代の垣根を越えた人々とのかかわりにおいて、ひとつずつ丁寧に作り上げていく壮大な世界です。継続的に舞台公演を行うことで得られる表現者としての大きな経験は自身のコアとなり、総合舞台芸術のプロフェッショナルとして多くの選択肢に出会い、子供たちが将来輝ける場所を見出せる大変意義のある活動と捉えられるのです。
DOAは東北・仙台を拠点に、本物の舞台公演を継続的に行うことで、子供の頃から柔軟な思考をもち、多角的な表現ができるプロフェッショナルを育成・輩出し続ける責務を担い続けます。私たちは、仲間とともに日々研鑽を重ね、輝ける未来をともに創造できる団体として心血を注ぎ続けてまいります。
一般社団法人Development Of Arts
芸術監督 堤 淳